介護サービス基準のパズル

介護サービスの基準・解釈通知・Q&Aを読み解く ~まずは「訪問介護」の基準から~

「解説 訪問介護の基準」追補 #5 p43、p266〜267 共生型訪問介護の従業者

 共生型訪問介護の従業者の資格に係る「告示」と「所定単位数等の取扱いに係る通知」との整合性について、p266〜267に記載しましたが、改めて確認したところ、私の理解が不足しておりましたので、以下【1】のとおり修正いたします。
 また、p43の共生型訪問介護の従業者の資格についても、【2】のとおり補足します。

【1】
 p267の表中、◆印を付けた研修課程修了者について、「告示A(編注:以下に説明)と費用通知で整合性が取れていないもの」と説明していますが、正しくは、次のとおりとなります。

◆実務者研修修了者
 次のとおり、通常の訪問介護事業所の従業者に含まれるため、共生型訪問介護事業所の従業者にも該当する。

・「介護員養成研修の取扱細則について(介護職員初任者研修・生活援助従事者研修関係)」の厚生労働省通知で、「実務者研修を修了している者については、当該研修における履修科目が、介護職員初任者研修課程において履修すべき科目を包含すると認められることから、各都道府県の判断により、介護職員初任者研修課程の全科目を免除することができるものとする」と記載していることから、通常、介護職員初任者研修課程修了者に準ずる者として取り扱われている。

◆行動援護従事者養成研修課程修了者、これに相当する研修課程修了者
 当該研修課程修了者は、障害福祉サービスの重度訪問介護事業所では従業者に該当するが、居宅介護事業所では従業者に該当しないもの。

 したがって、費用通知(注9 共生型訪問介護の所定単位数の取扱い)の「①居宅介護事業所が、要介護高齢者に対し訪問介護を提供する場合」のイ及び口の説明には、当該研修課程修了者は含まれない。

 一方、「②重度訪問介護事業所が、要介護高齢者に対し訪問介護を提供する場合」は、いずれの従業者であっても減算が適用されるため、当該研修課程修了者も含まれることになる。

◆介護職員初任者研修課程修了者
◆生活援助従事者研修課程修了者
 次の規定により、通常の訪問介護事業所の従業者に含まれるため、共生型訪問介護事業所の従業者にも該当する。

・介護保険法施行令第3条第1項第一号で、共生型訪問介護以外の訪問介護の従業者に係る研修課程ついて規定し、これを受け、介護保険法施行規則第22条の23第1項では、当該研修課程を「介護職員初任者研修課程及び生活援助従事者研修課程」と規定している。

【2】
 p43の表中、「重度訪問介護事業所の場合」の従業者の資格を明記していませんでしたが、次のとおりとなります。

●障害者居宅介護従業者基礎研修課程修了者(相当する研修課程修了者を含む)
●一定の実務経験を有する者
●重度訪問介護従業者養成研修課程修了者(相する研修課程修了者を含む)
については、居宅介護事業所の従業者に加えて、重度訪問介護事業所の従業者にも該当する。

●旧外出介護研修修了者
については、居介護事業所の従業者のみに該当し、重度訪問介護事業所の従業者は該当しない。

●この表に記載されていない「行動援護従業者養成研修課程修了者(相当する研修課程修了者を含む)」については、重度訪問介護事業所の従業者のみに該当し、居介護事業所の従業者は該当しない。

●表の中央の上、「介護福祉士」から「居宅介護職員初任者研修課程修了者(相当する研修課程修了者を含む)」までは、居宅介護事業所でも重度訪問介護事業所でも従業者に該当する。

 

【補足説明】
 障害福祉サービスの居宅介護や重度訪問介護、同行援護、行動援護の従業者の要件については、以下の「告示B」で包括的に規定していますが、それぞれのサービス種別ごとに障害報酬が算定できる従業者は、報酬告示で「告示B」に掲げる者の中から限定しています。

 共生型訪問介護でも同様に、従業者(通常の訪問介護での従業者を除く)の要件は、以下の「告示A」で包括的に規定し、共生型訪問介護の指定を受けた居宅介護と重度訪問介護の事業所で介護報酬が算定できる従業者は、報酬告示(イ〜ハの注9)で減算について規定し、通知では減算しない場合も含めた報酬算定の取扱いを説明しています。

 この取扱いによって、居宅介護の場合は、従業者の区分によって、減算しない場合と減算する場合がありますが、重度訪問介護の場合は、いずれの従業者であっても減算することになります。

 報酬告示(イ〜ハの注9)と通知で、「行動援護従業者養成研修課程修了者(相当する研修課程修了者を含む)」の取扱いが示されていなかった理由は、①そもそも当該研修課程修了者は、居宅介護の従業者には該当せず、重度訪問介護の従業者に該当するものであること、②重度訪問介護では、いずれの従業者であっても減算が適用になることーからと思われます。

 これなどは、障害福祉サービスの基準も分かっていないと、正しく理解することが難しいものでした。素直に反省するとともに、改定版では修正しておきたいと思います。

【告示A】
居宅介護又は重度訪問介護に係る指定障害福祉サービスを提供している者として厚生労働大臣が定めるもの(平成30厚生労働省告示第183号)

共生型訪問介護の従業者の資格については、通常の訪問介護の従業者の資格に加えて、介護保険法施行令第3条第1項第二号に基づき、告示Aに規定している。

この告示Aで、次の告示Bのうち、「第1条第三号から第五号まで、第七号から第十号まで、第十二号から第十五号まで、第十七号及び第十九号から第二十二号までに掲げる」各種研修課程の修了者としている。

告示Bで次の号を除外している理由
●第一号「介護福祉士」
---介護保険法第8条第2項で規定。
●第二号「実務者研修修了者」
---「介護員養成研修の取扱細則について(介護職員初任者研修・生活援助従事者研修関係)」の厚生労働省通知で、実務者研修の履修科目は、介護職員初任者研修課程での履修科目を包含すると認められているため、通常、「介護職員初任者研修課程修了者」(介護保険法施行規則第 22条の23第1項で規定)に準ずる者として取り扱われている。
●第六号「同行援護従事者養成研修課程修了者」、第十一号・第十六号「同行援護従事者養成研修課程に相当する研修課程修了者」
---当該研修課程修了者は、居宅介護事業所及び重度訪問介護事業所の従業者に該当しない。
●第十八号「介護職員初任者研修課程修了者」、第十八の二号「生活援助従事者研修課程修了者」
---介護保険法施行規則第 22条の23第1項で規定。

【告示B】
指定居宅介護の提供に当たる者としてこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定めるもの等(平成18年厚生労働省告示第538号)

 

【参考】共生型サービスについて
 共生型サービスは、障害者が65歳以上になっても、従来から障害福祉で利用してきたサービスの利用継続が可能となるように、介護保険サービスと障害福祉サービスで平成30年度に創設されたものです。

 この制度ができた背景には、65歳以上の利用者に対する障害福祉サービスと介護保険サービスの適用関係の問題がありました。

 つまり、障害福祉サービスの利用者が65歳以上になると、それまで利用していた障害福祉サービスに類似するサービスが介護保険サービスにある場合(ホームヘルプサービスやデイサービス、ショートステイなど)には、障害者総合支援法第7条の規定に基づき、原則として介護保険サービスの利用が優先されることになります。

 このため、共生型サービスの創設前は、65歳まで、例えば、障害福祉サービスの居宅介護事業所を利用していた方は、65歳を境に、なじみのある事業所から、介護保険サービスの訪問介護事業所への移行が余儀なくされる可能性がありました。

 それが、共生型サービスの創設によって、「共生型訪問介護の指定を受けた居宅介護(重度訪問介護)」又は「共生型居宅介護(重度訪問介護)の指定を受けた訪問介護」の事業所であれば、65歳になっても、同じ事業所を継続的に利用することが可能になったものです。

 なお、現状では、共生型サービスの指定を受けた事業所は、全国的に見ても多くありません。
 厚生労働省の資料では、障害福祉サービスの居宅介護事業所、重度訪問介護事業所で、共生型訪問介護の指定を受けた事業所は、令和4年11月審査分で16事業所にとどまっています。
 また、訪問介護事業所で、共生型居宅介護、共生型重度訪問介護の指定を受けた事業所は、令和4年11月審査分で173事業所になっています。

 共生型サービスに係る厚生労働省のサイトは、こちら