介護サービス基準のパズル

介護サービスの基準・解釈通知・Q&Aを読み解く ~まずは「訪問介護」の基準から~

訪問介護のサービス提供責任者の配置基準40:1での「利用者」の数とは?

障害福祉サービスでの「居宅介護」などのサービスも一体的に提供している場合は、その利用者も含めるのか?

第1号訪問事業の「旧介護予防訪問介護相当サービス」も一体的に行っている場合は、その利用者も含めるのか?

第1号訪問事業の「訪問型サービスA」(旧介護予防訪問介護にかかる基準よりも緩和した基準によるサービス)も一体的に行っている場合は、その利用者も含めるのか? 

 第1号訪問事業や障害福祉サービスの居宅介護なども一体的に運営している訪問介護事業所では、それぞれの事業のサービス提供責任者を兼務していることが多いと思いますが、その場合、「利用者」の数え方を正確に理解しておく必要があります。曖昧な理解では、配置基準に適合しない事態も生じかねません。

 上記について回答する前に、訪問介護事業所のサービス提供責任者の配置基準について、その概要を説明しておきます。

 サービス提供責任者については、利用者数に対して40:1での「常勤」配置が原則ですが、次の【A】【B】の場合に、一部は「非常勤」での配置も可能とする緩和措置(常勤換算方法での配置)が設けられています。

【A】利用者の数が40人を超える事業所(40:1での配置)

【B】次の3条件を満たす事業所(50:1での配置)

  1. 常勤のサービス提供責任者を3人以上配置
  2. サービス提供責任者の業務に主として従事する者を1人以上配置(訪問介護員としてのサービス提供時間は1月当たり30時間以内)
  3. サービス提供責任者が行う業務の省力化・効率化(①勤務シフト調整について支援ソフトを活用、②利用者情報についてITを活用して情報共有、③利用者に複数のサービス提供責任者が共同して対応~の3つの取組のいずれかを実施) 

 なお、【A】【B】いずれの場合であっても、①「非常勤」のサービス提供責任者の勤務時間は常勤の勤務時間の1/2以上であること、②一定数の「常勤」のサービス提供責任者を配置すること(基準通知の別表一、二で規定)〜になっていますので、注意が必要です。

 「利用者」については、省令(第5条第2項)で次のとおり規定しています。

利用者(当該指定訪問介護事業者が法第115条の45第1項第1号イに規定する第1号訪問事業(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号。以下「整備法」という。)第5条による改正前の法(以下「旧法」という。)第8条の2第2項に規定する介護予防訪問介護に相当するものとして市町村が定めるものに限る。)に係る法第115条の45の3第1項に規定する指定事業者(以下「指定事業者」という。)の指定を併せて受け、かつ、指定訪問介護の事業と当該第1号訪問事業とが同一の事業所において一体的に運営されている場合にあっては、当該事業所における指定訪問介護又は当該第1号訪問事業の利用者。以下この条において同じ。)

 ( )内の青字の部分の規定からは、介護予防・日常生活支援総合事業のうち「旧介護予防訪問介護相当サービス」の指定も受けて、同一の事業所で訪問介護の事業と一体的に運営している場合には、利用者は、「訪問介護の利用者(要介護者)」+「旧介護予防訪問介護相当サービスの利用者(要支援者・事業対象者)」となります。

 また、利用者数の計算方法については、基準通知で、①「前3か月の月ごとの実利用者数の合計÷3」で計算すること、②通院等乗降介助のみの利用者は0.1で計算することを定めています。

 上記の省令・基準通知を踏まえて、冒頭の質問に対する回答について説明していきます。なお、以下の回答では、「同じ人がそれぞれの事業のサービス提供責任者を兼務している場合」を前提としていますので、注意してください。

 まず、「①障害福祉サービスでの「居宅介護」などのサービスも一体的に提供している場合は、その利用者も含めるのか?」については、省令・基準通知には何ら規定されていません。

 このことについて、平成24年3月30日のQ&Aでは、「訪問介護・・・の指定を受けていることをもって、同一の事業所が障害者自立支援法【編注:現在では障害者総合支援法】における居宅介護等(居宅介護、同行援護、行動援護又は重度訪問介護)の指定を受ける場合」には、サービス提供責任者は両事業を兼務することは差し支えないとし、その場合の取扱いについて次のとおり記載しています。

 当該事業所全体で確保すべきサービス提供責任者の員数については、次のいずれかの員数以上とする。

①当該事業所における訪問介護等及び居宅介護等(重度訪問介護については利用者数が10人以下の場合に限る。)の利用者数の合計40人ごとに1以上

②【編注:平成24年度改定前の配置基準に係るものであるため、省略】

③訪問介護等と居宅介護等のそれぞれの基準により必要とされる員数の合計数以上

 なお、当該居宅介護等に係る指定以降も、訪問介護等の事業のみで判断したときに、訪問介護等に係る基準を満たしていることが必要となる。

 したがって、同じ人がそれぞれの事業のサービス提供責任者を兼務している場合、③での計算は煩雑になるので、通常は①で計算することになります。したがって、障害福祉サービスでの居宅介護、同行援護、行動援護又は重度訪問介護(重度訪問介護については利用者数が10人以下の場合に限る。)のサービス利用者も含める取扱いになります。

 これを、障害福祉サービスの利用者を含めないで、訪問介護だけの利用者で計算してしまうと、訪問介護のみに従事するサービス提供責任者の必要数を、「実際の配置数=両事業を兼務し両方の利用者を担当しているサービス提供責任者の数」と比較することになり、適合状況を正確に把握することはできません。

 また、上記のなお書き「居宅介護等に係る指定以降も、訪問介護等の事業のみで判断したときに、訪問介護等に係る基準を満たしていることが必要となる」については、両事業の利用者数に占める訪問介護の利用者数の割合が少ない場合であっても、訪問介護のみでの配置基準を満たす必要があることを意味していると思われます。

 例えば、訪問介護の利用者20人+障害福祉サービスの利用者60人の場合、全体の利用者は80人となるので、両事業を兼務するサービス提供責任者は(80÷40=)2人必要となります。

 この場合、訪問介護のみで見た場合に(20÷40=)0.5人でいいかと言うというと、そういう訳ではなく、40:1の配置基準での最小必要数である1人は必要ということになります。

 なお、それぞれの事業ごとに別の人をサービス提供責任者として配置している場合には、③で計算します。

 次に、「②第1号訪問事業の「旧介護予防訪問介護相当サービス」も一体的に行っている場合は、その利用者も含めるのか?」については、上記の省令での「利用者」の定義に規定されているとおり、要支援者・事業対象者の利用者も含めることになります。

 では、「③第1号訪問事業の「訪問型サービスA」(旧介護予防訪問介護にかかる基準よりも緩和した基準によるサービス)も一体的に行っている場合は、その利用者も含めるのか?」は、どうでしょうか?

 上記の省令での「利用者」の定義には規定されていませんので、「含めない」と解釈するのが妥当かと思われますが、そうではありません。

 実は、平成30年3月30日に厚生労働省から、「指定訪問介護と介護予防・日常生活支援総合事業の訪問型サービスAにおけるサービス提供責任者の兼務について」という事務連絡が出ていて、次のとおり記載しています。

 指定訪問介護と、介護予防・日常生活支援総合事業の第1号訪問事業(主に雇用されている労働者により提供される、旧介護予防訪問介護に係る基準よりも緩和した基準による訪問サービス(訪問型サービスA)に限る。以下「訪問型サービスA」という。)を一体的に運営する場合において、同一の人物がサービス提供責任者の業務を行うことは可能である。
 なお、このような場合におけるサービス提供責任者の必要数を算出するに当たっての利用者数の計算方法は市町村の判断になり、具体的には、指定訪問介護の利用者を1としつつ、訪問型サービスAの利用者を1とすることのほか、例えば0.5などに緩和することも可能である。

 したがって、③の答えは、訪問型サービスAの利用者(要支援者・事業対象者)も含めるが、その計算方法は市、町村の判断によるものであり、1として計算するほか、0.5などに緩和して計算することも可能という取扱いになります。

 なお、訪問型サービスAの利用者数の計算方法について市町村が判断を明確にしていることは少ないと思われるため、安全策として、訪問型サービスAの利用者も1として計算するのが無難ではないかと考えます。

 この事務連絡は、厚生労働省から「介護保険最新情報」として発出されておらず、厚生労働省のホームページの「介護サービスQ&A」にも掲載されていないため、十分に周知されていないのが実態のようです。

  • 事務連絡の掲載場所は、こちら(内閣府「平成29年の地方からの提案等に関する対応方針に対するフォローアップ状況(通知等一覧)」管理番号15)