【介護保険法の改正】
介護保険法の一部を改正する法律案が、令和5年2月10日、現在開催中の国会(第211回通常国会)に、「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」の一括法案として提出されました。改正法案の概要は、以下の6項目です。
①介護サービス事業所・施設における生産性の向上
国・地方公共団体の責務を規定する介護保険法第5条で、介護保険事業の運営が健全・円滑に行われるように、都道府県に対して、必要な助言・適切な援助を義務付けていますが、新たに、この助言・援助に当たっては、介護サービス事業所・施設における業務効率化、サービスの質の向上などの生産性の向上に資する取組が促進されるように努力義務を課すものです。
また、市町村介護保険事業計画で、都道府県と連携した介護現場の生産性の向上に資する取組を定めることを、新たに努力義務としています。
②地域密着型サービスの「複合型サービス」の定義の見直し
現在、介護保険法施行規則第17条の12で規定している「看護小規模多機能型居宅介護」を、介護保険法第8条第23項の「複合型サービス」の中で明確に位置付けるとともに、他のサービス種別については省令で定める旨規定するものです。
社会保障審議会介護保険部会の「介護保険制度の見直しに関する意見」では、「複数の在宅サービス(訪問や通所系サービスなど)を組み合わせて提供する複合型サービスの類型などを設けることも検討することが適当である」という考えが示されましたので、新たなサービス種別が、今後、省令で規定されることになると思われます。
③地域包括支援センターの業務の見直し
現在、介護予防支援事業者の指定は、地域包括支援センターの設置者に限定されており、省令で、指定介護予防支援事業者が行う業務の一部を指定居宅介護支援事業者に委託することが可能となっています。
改正案では、地域包括支援センターの設置者に加えて、指定居宅介護支援事業者も指定が受けられるようにするものです。
このほか、地域包括支援センターで実施している包括的支援事業(介護保険法第115条の45第2項)のうち「総合相談支援事業」(同項第1号)の一部を、指定居宅介護支援事業者その他省令で定める者への委託を可能とする見直しが行われています。
④介護サービス事業者経営情報の調査及び分析
「第11節 介護サービス事業者経営情報の調査及び分析等」を新設し、都道府県知事に対して、当該都道府県の区域内に事業所・施設を有する介護サービス事業者に係る当該事業所・施設ごとの収益・費用等(介護サービス事業者経営情報)について、調査分析を行い、その内容を公表するよう努力義務を課すものです。その目的は、「地域において必要とされる介護サービスの確保のため」としています。
一方、介護サービス事業者に対しては、都道府県知事への「介護サービス事業者経営情報」の報告を義務付けています。
なお、介護サービス情報公表制度と同様に、報告拒否・虚偽報告の場合の対応として、①都道府県知事は事業者に対して、報告や報告内容の是正を命令することができること、②事業者がこの命令に従わないときは、都道府県知事は、a)自ら指定・許可した事業者に対して、指定・許可の取消しや指定・許可の全部又は一部の効力を停止することができること、b)市町村が指定した事業者については、指定の取消しや指定の全部又は一部の効力を停止することが適当であると認めるときは、その旨を市町村長に通知すること、が規定されています。
また、厚生労働大臣は、「介護サービス事業者経営情報」を収集し、その分析結果を国民にインターネット等を通じて迅速に提供することができるよう必要な施策を実施するものとしています。
⑤介護情報の収集・提供等に係る事業の創設
市町村が行う地域支援事業に、被保険者、介護サービス事業者その他の関係者が被保険者に係る情報を共有し、活用することを促進する事業を追加するものです。
これは、現在、利用者に関する介護レセプト情報や要介護認定情報、LIFE(科学的介護情報システム)情報などが、事業所や自治体等に分散していることから、これらの情報を利用者・自治体・事業者・医療機関等が電子的に利活用できる情報基盤を整備するために、保険者である市町村の事業として位置付けるものとされています。
⑥介護保険事業計画の見直し(略)
上記①~④の改正は、令和6年4月1日から施行し、⑤の改正は、「公布の日から起算し4年を超えない範囲内において政令で定める日」から施行となっています。
詳しくは、以下の厚生労働省のホームページの「法律案要綱」(p29~33)、「法律案新旧対照条文」で確認してください。
- 提出法律案については、こちら(厚生労働省)
【介護保険法施行規則等の改正】
次の介護保険法施行規則等の改正については、令和5年2月3日に改正案が示され、現在、「パブリック・コメント」で意見の募集が行われています。
①介護保険法施行規則の一部を改正する省令案
・介護サービス事業者が都道府県知事・市町村長に対して行う指定申請や変更の届出等は、厚生労働大臣が定める様式により行う。
・介護サービス事業者が都道府県知事・市町村長に対して行う申請等は、やむを得ない事情がある場合を除き、厚生労働省の「電子申請・届出システム」により行う。
②指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示案
・指定居宅サービス等の介護サービス事業者が都道府県知事・市町村長に対して行う、介護給付費算定に係る体制等についての届出は、厚生労働省が定める様式により行う。
・当該届出は、やむを得ない事情がある場合を除き、厚生労働省の「電子申請・届出システム」により行う。
3月4日まで意見を受け付け、3月下旬に公布・告示が予定されています。いずれも、施行期日・適用日は令和6年4月1日となっています。
- (2023-04-08追記)パブリック・コメントの結果は、こちら
- (2023-04-08追記)改正省令・告示は次のとおり
介護保険法施行規則の一部を改正する省令(令和5年3月31日厚生労働省令第46号)
指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和5年3月31日厚生労働省告示第125号)
(補足)
・「電子申請・届出システム」は、厚生労働省が運用する「介護サービス情報公表システム」の機能拡張を行い、指定申請機能等のウェブ入力・電子申請を可能とするもの。
・指定申請等のウェブ入力・電子申請は、第1期(令和4年度下期)、第2期(令和5年度上期)、第3期(令和5年度下期)に分けて運用が開始され、利用可能な自治体数は順次拡大することになっています。