介護サービス基準のパズル

介護サービスの基準・解釈通知・Q&Aを読み解く ~まずは「訪問介護」の基準から~

難解な「基準」を理解するには

 厚生労働省が定める基準(特に、人員基準と費用基準)は、非常に分かりにくいため、一読してその内容を理解するのは難しいのが実態です。

 例として、費用基準(平成12年厚生省告示第19号)の「単位数表」の訪問介護費イ~ハでの「注2」(身体介護の算定・20分未満の身体介護の算定)を引用して説明します。

イについては、訪問介護員等(介護福祉士、介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第22条の23第1項に規定する介護職員初任者研修課程を修了した者及び介護保険法施行令第3条第1項第2号に規定する者に限る。注4において同じ。)が、身体介護(利用者の身体に直接接触して行う介助並びにこれを行うために必要な準備及び後始末並びに利用者の日常生活を営むのに必要な機能の向上等のための介助及び専門的な援助をいう。以下同じ。)が中心である指定訪問介護を行った場合に所定単位数を算定する。なお、身体介護が中心である指定訪問介護の所要時間が20分未満である場合は、イ(1)の所定単位数を、身体介護が中心である指定訪問介護の所要時間が20分未満であって、かつ、別に厚生労働大臣が定める基準に適合するものとして都道府県知事(地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)及び同法第252条の22第1項の中核市(以下「中核市」という。)にあっては、指定都市又は中核市の市長。以下同じ。)に届け出た指定訪問介護事業所において、別に厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者に対して行われる場合は、イ(1)の所定単位数を当該算定月における1月当たりの訪問介護費を指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)の別表指定地域密着型サービス介護給付費単位数表の定期巡回・随時対応型訪問介護看護費のイ(1)のうち当該利用者の要介護状態区分に応じた所定単位数を限度として、それぞれ算定する。

 おそらく、読む気力も無くなるような文章だと思います。

 厚生労働省が告示や省令で定める基準は、間違った解釈が生じないように、正確性を最優先にして全てを網羅しているため、文章は長く、括弧書きも多用され、非常に分かりにくい文章になっています。一度読んだだけでは、その内容の理解が困難なものが少なくありません。

 これは、法律の世界では通常のこと、仕方のないことのようですが、一般の市民にとっての「分かりやすさ」とはほど遠いものがあります。

 上記の引用文をもう少し分かりやくするため、括弧書きを省略し、改行を加えて、少し補足すると、次のとおりになります。

【身体介護が中心である場合の所要時間に応じた単位】については、訪問介護員等が、身体介護が中心である指定訪問介護を行った場合に所定単位数を算定する。

なお、身体介護が中心である指定訪問介護の所要時間が20分未満である場合は、イ(1)【所要時間が20分未満の場合】の所定単位数を、

身体介護が中心である指定訪問介護の所要時間が20分未満であって、かつ、別に厚生労働大臣が定める基準【注1】に適合するものとして都道府県知事に届け出た指定訪問介護事業所において、別に厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者【注2】に対して行われる場合は、イ(1)の所定単位数を当該算定月における1月当たりの訪問介護費を指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準の別表指定地域密着型サービス介護給付費単位数表の定期巡回・随時対応型訪問介護看護費のイ(1)のうち当該利用者の要介護状態区分に応じた所定単位数を限度として、

それぞれ算定する。

 これを読み解くと、は、当たり前のことを言っているに過ぎません。

 は、費用基準の留意事項通知を含めて読み解くと、地域密着型サービスの「定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所」と一体的に運営(又は運営する計画を策定)している場合に、「頻回の訪問」(20分未満の身体介護を、前回の訪問介護からおおむね2時間の間隔を空けずに行うこと)が可能であり、2時間未満であっても所要時間は合算しない取扱いになる場合の算定方法の説明で、その内容は非常に難解です。

 での算定を適用するには、事前に、注1の厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)の第一号(次の引用文)で規定している基準に適合することについて、都道府県への体制届が必要となります。

次に掲げる基準のいずれにも適合すること。

イ 利用者又はその家族等から電話等による連絡があった場合に、常時対応できる体制にあること。

ロ 指定訪問介護事業所(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号。以下「指定居宅サービス等基準」という。)第5条第1項に規定する指定訪問介護事業所をいう。以下同じ。)に係る指定訪問介護事業者(指定居宅サービス等基準第5条第1項に規定する指定訪問介護事業者をいう。以下同じ。)が次のいずれかに該当すること。

(1) 当該指定訪問介護事業者が指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業者(指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号。以下「指定地域密着型サービス基準」という。)第3条の4第1項に規定する指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業者をいう。以下同じ。)の指定を併せて受け、かつ、一体的に事業を実施していること。

(2) 当該指定訪問介護事業者が指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業者の指定を併せて受けようとする計画を策定していること(当該指定訪問介護事業者については、要介護状態区分が要介護3、要介護4又は要介護5である者に対して指定訪問介護(指定居宅サービス等基準第四条に規定する指定訪問介護をいう。以下同じ。)を行うものに限る。)。

 また、の算定は、一定の利用者に対してサービスを提供した場合に認められるもので、対象となる利用者については、注2の厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)の第一号で、次のとおり定められています。

次のいずれにも該当する利用者

イ 要介護状態区分が、要介護1又は要介護2である利用者であって、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症のもの及び要介護3、要介護4又は要介護5である利用者であって、疾病若しくは傷害若しくはそれらの後遺症又は老衰により生じた身体機能の低下が認められることから、屋内での生活に介護を必要とするもの

ロ 指定居宅介護支援事業所(指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第2条に規定する指定居宅介護支援事業所をいう。以下同じ。)の介護支援専門員が開催するサービス担当者会議(指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第13条第9号に規定するサービス担当者会議をいい、指定訪問介護事業所(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号。以下「指定居宅サービス等基準」という。)第5条第1項に規定する指定訪問介護事業所をいう。)のサービス提供責任者(指定居宅サービス等基準第5条第2項に規定するサービス提供責任者をいう。)が参加し、3月に1回以上開催されている場合に限る。)において、おおむね1週間のうち5日以上、頻回の訪問を含む所要時間が20分未満の指定訪問介護(指定居宅サービス等基準第4条に規定する指定訪問介護をいう。以下同じ。)(身体介護に該当するものに限る。)の提供が必要であると認められた利用者

 以上が「20分未満の身体介護の算定」に係る告示ですが、さすがにこれだけでは分からないので、厚生労働省からは、費用基準の留意事項通知やQ&Aが出ています。

 したがって、費用基準の内容を正しく理解するためには、告示、通知、Q&Aを全部まとめて理解する必要があります。

 今回出版した「解説 訪問介護の基準」では、基準のすべての項目ごとに、基準の省令・告示、通知、Q&Aをかみ砕いて表形式に整理し、一体のものとして分かりやすく、かつ詳細に解説しています。

 これをお読みいただければ、すべての基準の中身について、理解を深めていただけるのではないかと思います。

 この本での【「20分未満の身体介護」の算定】のページを添付しますので、参考にしてください。(全部で5ページになりますが、Q&A全文の3ページ分は省略しています。)

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